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日本の大学スポーツは新しいステージへーーUNIVAS(ユニバス)は大学体育会をどう変えるのか

大学スポーツ協会、 通称UNIVAS(Japan Association for University Athletics and Sport)が2019年3月1日に発足する。UNIVAS創設によって、現場の学生やチームは何が変わるのか。日本のスポーツ界や社会はどう変わるのか。Player! の代表尾形が、UNIVAS創設に関わる3名、ヴィッセル神戸元社長の池田氏、B.LEAGUE創設に関わられた境田氏、スポーツ庁(TMI総合法律事務所からスポーツ庁に駐在中)の小塩氏に、UNIVASと日本の大学スポーツの未来を聞いた。

UNIVAS成功の肝はデジタル、コラボレーション、ガバナンス

尾形:UNIVASは「選手の安全確保」「学業との両立」「大学スポーツのブランド力向上」が3本柱として掲げられていますが、改めて創設期からの理念や設立背景、今後の計画などをお聞かせください。

池田:UNIVASは大学や競技団体を横断する形の組織です。初年度で200大学、20の競技団体に加盟してもらう事が目標となっております。アメリカと違って、日本は既に競技単位の競技団体、通称学連があり、競技団体抜きにしては試合の開催への関与ができませんので、競技団体も加えて大学スポーツをより良いものにしようとしております。

池田敦司: UNIVAS専務理事。2005年、楽天イーグルスの創設、ボールパーク構想と地域密着戦略を進め、取締役副社長を務める。2015年クリムゾンフットボールクラブ(ヴィッセル神戸)代表取締役社長就任、集客強化とファシリティ改善を推進。仙台大学体育学部教授。
池田敦司: UNIVAS専務理事。2005年、楽天イーグルスの創設、ボールパーク構想と地域密着戦略を進め、取締役副社長を務める。2015年クリムゾンフットボールクラブ(ヴィッセル神戸)代表取締役社長就任、集客強化とファシリティ改善を推進。仙台大学体育学部教授。

境田:Bリーグを作り上げた際、最初は、企業チームが主体のNBLと地域に根ざしたプロリーグのbjリーグという、既存の2つのリーグを統合しようとしました。しかし、統合に必要な作業や手続きに多くの時間を要することが見込まれたことや、2つのリーグの理念を統一することが困難であったことから、強引な方法であることを承知で、全てのチームに既存のリーグから一度脱退していただき、新たに立ち上げたリーグに加盟していただきました。 しかし今回は、例えば各大学の運動部を既存の学連等から脱退させてUNIVASの直轄と位置付け、UNIVAS単独で大学スポーツを全て統括するというような形にしたら大混乱が起きてしまいます。これまで各競技が歩んできた歴史や、その過程で関わって下さった方々、協力してくださっている方々を無視して新しい統括団体を立ち上げてもうまくいきません。まずは、大学と学連がお互いにその歴史や考え方を尊重して、新しいものを一緒に作り上げていくことから始めるべきだと考えています。

池田:既存のものを是として考え、一緒になることで新しい価値が作り出せるのではないかと思います。UNIVASのベースに、スポーツ庁が提言する大学として学内のスポーツを統括するアスレティック・デパートメントの創設があります。これは今まで以上に大学がスポーツ部活動にしっかりとコミットしていこうという意思が反映された組織であり、各部活動のシナジーを生み出していくものです。

境田:バスケットボール界改革は2つのプロリーグを統合してBリーグを創設しただけでなく、 日本バスケットボール協会(JBA)とその傘下にある各都道府県協会の改革も一体となったものでした。それまで、各都道府県協会は法人化していない任意団体で、JBAのガバナンスも行き届いていませんでした。これを、全ての都道府県協会を法人化するとともに、都道府県協会がJBAの傘下に位置付けられることを明確にしました。例えば富山県、富山県協会、Bリーグの富山グラウジーズが連携すれば、地域おこしや地域におけるスポーツの振興を進めやすくなります。このような形で、JBAとBリーグがコラボレーションして地域のスポーツ活性化を進めていきました。これらの改革により、バスケットボール界の事業規模はBリーグ創設からの2年間で3~5倍に拡大したのです。更に、JBAとBリーグが連携してスマホを使ったデジタルマーケティングも進め、価値を創出してきました。 UNIVASにおいても、学連と大学とのコラボレーション、そしてデジタル技術を活用することで、大きくビジネスを生み出せる可能性があるのではないかと感じています。肝は、「デジタル」、「コラボレーション」、「ガバナンス」です。現在、大学スポーツのガバナンスは多くの競技で脆弱です。学連の多くは法人化していないか、もしくは法人化していても非常にガバナンスが弱いです。また、競技ごとに縦割りで組織が作られているので、競技間のコラボレーションがありません。その中で、大学と学連が上手くコラボレーションして、ガバナンスをきちんと確立し、そこにデジタル技術で横軸を通すことができれば、ものすごく大きな価値を生み出せる可能性があります。バスケットボール界改革の考え方が、実はUNIVASにも応用できるのです。これは、まだアメリカの大学スポーツでも充分にできていない部分なので、我々はこういった形で新しい価値を作り出していきたいと考えています。

小塩:団体の一部の者によって、その団体を私物化しているような例もまだあります。これは学連に限りません。近時のスポーツ関係の不祥事をみれば明らかです。しっかりとしたガバナンスを浸透させていく事もUNIVASの使命だと感じています。コラボレーションについて、今までは、競技内での大学間の繋がりはあったと思うのですが、それ以外の繋がりがあまりなかったと思います。大学スポーツの主役は大学生ですので、試合も大学生がどんどん観に行く仕掛けが必要です。大学スポーツの統括団体が存在していなかったので、横断的な仕組みを構築することが難しかったのですが、UNIVASがそのような役割を担うべきと思います。

尾形:UNIVASは元々日本版NCAAという呼び名でした。アメリカのNCAA(National Collegiate Athletic Association)から参考にされているところはありますか?

池田:一番大きいのは、当たり前のように「文武両道」であるというところです。すでにNCAAでは運動と学業の両立が規則化されており、アスリートがセカンドキャリアを考えることは必要なこととして定着しています。 ただ残念ながら、日本はまだまだ足りていない部分です。学生アスリートの将来を本人とそれに関わる人たちにしっかりと考えてほしいと思っています。アスリートで生活が維持できていく瞬間って人生の中においては本当に短い期間です。競技も一生懸命やってもらいたいけれども、一方では自分の人生を考えると然るべき勉強をやっておくという事が必要です。その文化を根付かせていきたいですね。一朝一夕にはいきませんけれども。

小塩:「安全安心」の部分も参考にしています。NCAAの場合、様々なプログラムを実践しています。脳震盪の予防はもちろんですが、メンタルヘルス、食事・栄養・睡眠、対人関係に関する取組みも進んでいます。最新の科学や統計データに基づいた教育がされているので、学生も安心して競技に専念できます。例えば、安全安心のハンドブックでは、日焼けの項目まで設定し、詳細な対策がされています。日本の場合、各競技団体で様々な対策を実施していますが、不十分な点もまだあると思います。

境田:日本では、安全確保については事故の情報すら十分に共有されていません。アメリカの大学の経営者には、スポーツが人格形成や教育の基盤となっているという考えがベースにあり、そういった大学が集まってNCAAが作られています。ですから、Student Firstで、スポーツと勉強を通じて学生の人格形成をさせる、もしくは教育するというのがNCAAの基本理念になるのです。

池田:よくビジネススケールの面で比較されますけど、実はNCAAって100年かかっているわけです。なぜ100年前に組織が形成されたかというと、アメフトの事故からできているわけです。死亡事故が多いんで、これはガバナンスをしっかりしなければいけないというところから発足したのがNCAAです。競技の安全性を守るといった当たり前の部分は当然アメリカから学ぶべきことだと思っています。

手前から 境田正樹、池田敦司

UNIVASは学生や部活の何を変えるのか

境田:これまで、大学で運動部に所属する学生の多くは、自分たちの活動が課外活動だと認識していませんでした。大学も、今回のUNIVAS創設に向けた議論の中で、運動部活動に関するガバナンスや安全対策が行き届いていないことを執行部が初めて認識したケースが少なくありません。多くの団体で、本当にこれでいいのか、という戸惑いが生まれていますが、我々はこれをポジティブに捉えています。まずはそこに気づいていただくことが重要なのです。 現在、多くの大学では、運動部活動を正規の活動として位置づけるために必要な予算や人員を措置できていません。また、安全管理が不十分な状況でUNIVASに加盟すると大学が多大な責任を負うことになるという懸念もあり、UNIVASへの加盟を躊躇しています。実は、大学には予算が潤沢にあるわけではなく、むしろ予算や人員が削減される傾向の中で、新たに組織を作るとことは簡単ではありません。しかし、この機会に多くの大学でUNIVASに加盟するかどうかの検討は行われ、UNIVASの目指す方向性が正しいということは、多くの大学の執行部にご理解いただいていると思います。今回の募集で大学が何校加盟するかはわかりませんが、数年後には多くの大学が加盟すると考えています。

境田正樹: 東京大学理事。日本バスケットボール協会理事。Bリーグ理事。弁護士。これまでスポーツ基本法の制定、男子プロバスケットボール「B.LEAGUE」の創設にも尽力し、現在はスポーツ団体ガバナンスコードの策定にも尽力している。
境田正樹: 東京大学理事。日本バスケットボール協会理事。Bリーグ理事。弁護士。これまでスポーツ基本法の制定、男子プロバスケットボール「B.LEAGUE」の創設にも尽力し、現在はスポーツ団体ガバナンスコードの策定にも尽力している。

小塩:大学が運動部を管理する事の必要性に気付き始めていますね。今までだと、OB会や一部のOBが部の運営をしてしまっていた。当たり前のことですが、運動部は、大学の部であり、OB会の部ではないですよね。OBが支援をすることはいいですが、大学を介さず部活動を支配することは許されるべきではありません。例えば、OB会が監督の人事権を握るということなんてあり得ないわけです。しかし、そのようなことが当たり前のようにまかり通っている。ガバナンスが効いていないというところは大問題です。それを境田先生が仰ってくださった、気付きつつあるというフェーズですね。

境田:大学スポーツの振興、UNIVAS創設は文科省が中心となって進めている話なので、大学としては検討せざるを得ないという状況もあるでしょう。大学関係者の中には、大学スポーツ振興を推進したい方々、現在の運動部活動の状況を何とかしたいという思いを持っている人も多くいるはずです。その中で、あえて今回加盟しないという決断を下した大学も、それは深く検討をしてくださった結果だと思います。 今後、UNIVASがどのように運営されるのか、学生や大学関係者をはじめ多くの人が注視しています。ここで非常に良い取り組みを行い、学生や大学にメリットがあることがはっきり見えてくると、設立時に入会しない大学も追随してくると思います。

尾形:試合出場のためには学業における一定の成績が必要、というような学業基準は実際に設立直後から作られるのでしょうか?もしくは今後何かしらの基準ができていくのでしょうか?

小塩:今はその予定はないです。あくまで検証しましょうという段階です。ただ、例えば柔道学連は、一定の単位を取得しないと大学選手権には出さないといった取り決めがあったりします。早稲田大学も競技スポーツセンターが先進的な取組みをしています。そういった制度の存在を、他の学連や大学はそもそも知らない場合もありますよね。それを一つ知っていただく機会は作れるかなと思っています。そこから持ち帰って頂いて、制度の導入を検討して頂くというのもあると思います。

池田:ビジョンとしては、3年間実証検証をしてやり方を見定めていこうとしています。表面的に見ますと、成績が悪いと試合に出れないんだというところだけがクローズアップされがちです。ですが、やっぱり本質的にその学生にとって何が必要なのかということをしっかりと考え、バランスの良いご指導を部活の中でして頂ける形を目指しています。

小塩:あくまで試合に出す出さないの決定をされるのは大学であり学連の皆様だと思います。ただ、そこに対する情報共有や前提のUNIVASとして指針を出すというのはあり得ます。

尾形:現場の学生さんや運営、特に地方の大学における変化やメリットは創設初期からありますか?

池田:試合のライブ配信を、年間600試合を目標に行う計画があります。現状の大学スポーツは全体的には露出が足りません。露出がされているのは、一部の競技や一部の大会だけになります。競技によっては全国大会をやっても全く露出されていない競技もあったりするわけです。更に言うと、全国大会は露出されるけれども、地方の大会は全く露出されませんよね。その部分の露出をしっかりと広げ、アスリートの活躍をご父兄やOB・OGの方々などより多くの方々に見て頂けるようなインフラを作っていく事も、我々の目標です。

尾形:選手達にしても姿勢が変わるきっかけになりそうですね。見られているという意識があったら日大アメフトのような事案も起きていなかったかもしれません。副次的にガバナンスの強化にも繋がります。

池田:確かにそういう抑止力もあるかもしれないですね。実際に、プレイヤーのモチベーションも全く違うと思います。 少し余談ですが、私が所属をする仙台大学でサッカーの対抗戦をテストでライブ配信をしたことがあるんです。現地の観客数、ライブ映像配信の同時接続数、SNSでのリアクション数が、1対4対40くらいの倍数で増えていきました。タイムシフト配信やアーカイブは時間的制約がないので、昼間の試合を夜家に帰って見るとかそういうこともできます。

小塩:地方の大学にとって、各地の大学の試合を配信することができるというのは大きなメリットです。今まで地方の試合を見ることはなかなかできなかったですし、そもそも試合自体を知らなかった方もいると思います。UNIVASは多くの競技を配信していきますので、見られなかった試合を見られるようにするといことは、大きなメリットだと思っています。 また、今、境田先生がデータに基づいた競技力の向上に取り組んでいらっしゃっています。今までは、例えば東京大学とか早稲田、慶應等の限られた大学でしか取り組めていなかったのですが、そういった知見を地方にも展開をしていくプラットフォームをご検討いただいています。これは地方の大学にとって非常に良い事だと思います。強豪大学に行かなければ強くなれない訳ではなくて、どの大学に行っても、最先端の技術を提供される機会があり、競技力向上のチャンスがある状況にしたいなと。

手前から 尾形太陽、小塩康祐

境田:スポーツというのは、例えばサッカーを好きな人がテニスや野球も応援することがありますし、地元のチームが全国で優勝しそうという時には好きな競技にかかわらずみんな応援しますよね。大学スポーツの試合や大会に関する情報発信については、これまで十分に整備されていませんでしたが、各地域のプラットフォームのようなものを作れれば、みんなで応援するような仕組みにつながり、地域がものすごく元気になると思うんですね。

小塩:高校野球の金足農業は最たる例ですね。

池田:高校野球がわかりやすいトリガーになって地域と連携ができるというわかりやすい事例ですね。高校よりも大学スポーツというのは地域の方からすると少し敷居が高く見えることもあり、それをわかりやすく共感しやすいスポーツでつないでいくと、大学が地域におけるコミュニケーションの起点になることができると思います。

境田:スポーツを通じて国を豊かにする、という理念を大学スポーツでも中心にしたいですね。

池田:地方に大学やスポーツ施設が一つあるだけでも、その地域の活性度が大きく変わってきます。Jリーグも今全国55クラブありますが、地方に行けば行くほどそのクラブに対する支持度合いがすごく熱狂的になっていきます。

境田:川淵三郎さん(日本トップリーグ連携機構代表理事)もおっしゃっていましたが、 Jリーグを立ち上げた時には、スポーツを通じて地域を盛り上げるということを重視されていたそうです。大学もスポーツを軸にすると地域とつながりやすくなります。スポーツにはそういった不思議な力があると思っています。特に地方の大学は、スポーツをもっと前面に出して様々なところにアプローチしていくと、今までになかった価値が生まれると考えています。

UNIVASは日本のスポーツ界が変わる大きなチャンス

尾形:UNIVASとして産業界、民間企業に求めることや、今後期待したいことはありますか?

池田:我々はアスリートファーストで考えています。その実現に向けて色々なプログラム、サービスを提供していく事を考えています。そのサービスを提供するにあたってUNIVAS単体で実施が可能な事、民間企業のお力を借りて一緒にやっていく事で具現化が可能なことがあります。UNIVASの理念と主旨にご賛同頂き、パートナーとしてアライアンスを組んで共に学生アスリート向けのプログラムやサービスを提供していけたら嬉しいですね。

境田:UNIVASとどのように一緒に取り組んでいけるか、企業の方からも様々な提案をいただきながら、企業にとっても、学生にとっても、UNIVASにとってもメリットがある、WIN-WINの関係を築いていきたいと考えています。

尾形:アシックスはじめ、既に大学スポーツのサポートを公表している企業やブランドに関して、評価や期待はありますか?

小塩:素晴らしい取り組みをされてきたと思います。アシックスはじめ多くの企業が大学スポーツをサポートしています。このような企業と大学スポーツが接点をもつサポートをすることもUNIVASは検討していくべきと考えています。

小塩康祐: スポーツ庁参事官付弁護士。TMI総合法律事務所弁護士。早稲田大学時代は、ラグビー部に所属し、4年間で3回の大学日本一を経験する等、ラグビーに没頭。現在は、UNIVAS設立、スポーツ団体ガバナンスコードの策定等を担当。
小塩康祐: スポーツ庁参事官付弁護士。TMI総合法律事務所弁護士。早稲田大学時代は、ラグビー部に所属し、4年間で3回の大学日本一を経験する等、ラグビーに没頭。現在は、UNIVAS設立、スポーツ団体ガバナンスコードの策定等を担当。

池田:既存のその取り組みを全部なしにして日本全国一社にしようという考えはありません。現状においては、大学のご意思もあれば、競技の世界で決められていることもあると思います。基本的な構造を壊すということは考えていません。

境田:この舵取りは、企業との連携において大変重要なところです。企業側は、例えばユニフォームや用具について全部自社のブランドを使ってほしいと考えるのが自然ですが、それをいかにコントロールするか、というのもUNIVASにとって重要な観点だと思います。 もう一つ、私は2017年夏にアメリカを訪問して大学スポーツの現場を見てきたのですが、印象的だったのは、学生アスリートに対するメディカルサポート、トレーニングサポート、コンディショニングサポートなどがものすごく充実しているということです。それに基づいて、大学のアスレティック・デパートメントなどの研究部門が各選手のデータを収集し、個別のサポートを行っているのです。一方、日本の大学の運動部活動においては、科学的な知見がほとんど活用されていません。しかし、日本の大学にも、正しいトレーニング方法や指導方法に関する経験則はあります。その知見が大学間で共有されていないので、多くの大学の運動部員はものすごく貧困な情報の中で活動せざるを得ない状況に陥っているのです。そこで、UNIVASの中に「リサーチ・コーディネーション・センター(仮称)」を作り、各大学で持っている学生の競技力向上、怪我予防等に資する様々な知見や技術を集めて、それらを全国展開するというサービスをぜひ立ち上げたいと思っています。そうすると、スポーツ科学研究に取り組んできた大学にとっては、自大学の優れた知見・技術を全国展開するチャンネルができることになります。 日本のスポーツ界全体に大学の有する科学的な知見を活用することを、UNIVASが主導的役割を果たしながら進めていきたいと考えています。

尾形:ありがとうございました。最後に、この記事を見ていただいている学生のみなさまにメッセージをお願いします。

境田:今回の取り組みは、日本のスポーツ界が変わる大きなチャンスです。大学スポーツ界からスポーツ界全体、もしくは日本全体を豊かに発展させていくような可能性が充分にある事業なので、是非みなさんで一緒に力を合わせていきたいと思います。ご協力をよろしくお願いします。学生、研究者、大学、学連など、関係する全ての人にメリットがあるような形でUNIVASを立ち上げ、発展させていきたいと思います。

小塩:僕の個人的な思いにはなりますが、学生の皆さんには、スポーツを通じて感動するような体験をどんどん積んで欲しいし、素晴らしい仲間と出会ってほしいと思います。僕が学生時代に監督をしていただいていた清宮さんは、ラグビーをする意義を「泣くため」とおっしゃっていました。幸い、4年間で3回日本一を経験できたのですが、大学4年生の時に日本一になったときのことは今でも鮮明に覚えています。僕は実力不足でグランドに立てなかったけれども、試合前のアップでバッグを持ったときから涙が止まらなかった。ノーサイドのホイッスルの瞬間、同期と抱き合った時、自然と涙が流れました。グランドに降りてキャプテンの豊田と抱き合った際は、涙が止まらなかったですし、深夜、高田馬場のロータリーで「荒ぶる」を歌ったときも涙が止まらなかった。あの時の経験があるから、いまでも苦しい時やつらい時に頑張れます。現在、ラグビー部の同期は、まったく違うフィールドで活躍しています。僕は弁護士という道を選びましたが、会社経営やトップリーグ選手はじめ、各人がその世界の第一線で活躍しています。このような仲間と素晴らしい4年間を共有できたことは最大の財産です。 学生の皆さんが一生懸命に練習や試合をすることは、親御さんを感動させることはもちろん、観戦してくれる人を感動させるかもしれない。そして、そのような人が、また明日から仕事を頑張ろうとか、辛い気持ちを少しでも和らげることができるかもしれない。スポーツは、社会を良くできると思っています。そういったスポーツの力を僕は信じています。

池田:学生アスリート本人が喜ぶことで学生スポーツに関わる全ての人が喜ぶこと。それを目指していきます。ともに作り上げましょう!

左から 境田正樹、池田敦司、小塩康祐
(取材・文:尾形太陽/遠藤雄己、撮影:若月翼)