NTTSportict

ハンドボールを夢のある競技へ。AIカメラがマイナースポーツの未来を変える

「NTTSportict(NTTスポルティクト)」は、スポーツの試合を無人で撮影・編集・発信するAIカメラを搭載したスポーツ映像ソリューションの提供を開始した。これにより、普段テレビ等で配信されないマイナースポーツやアマチュアスポーツの試合を、いつでもどこでも視聴できるようになる。

そこで今回は、NTTSportictの代表取締役社長の中村正敏氏と、7年間フランスで活躍後、現在は日本ハンドボールリーグ大崎電気に所属し、日本代表選手かつキャプテンとして活躍する土井レミイ杏利氏、そして慶應義塾大学ハンドボール部主将の塚本清修氏に、マイナースポーツが抱える課題と解決するためのアイデア、強いチームの作り方などについて語っていただいた。

マイナースポーツやアマチュアスポーツとの接点を増やしたい

――NTTSportictは、試合のルールを学習し、ボールを自動追尾する次世代AIカメラ「Pixellot」を用い、撮影から編集、収録、放映まで無人でこなす映像ソリューションをリリースされました。まずは、その背景にあった思いを教えてください。

中村:NTTSportictは、スポーツを通して感動や笑顔を生み、地域社会の発展に寄与することを目指して、朝日放送グループホールディングスとのジョイントベンチャーとして2020年4月に設立しました。 その背景にあったのは、プロスポーツだけでなく、あらゆるスポーツとの接点を増やせば、より多くの人の生活が豊かになるはずなのに、なぜマイナースポーツやアマチュアスポーツの映像は配信されないのかという疑問です。 その理由として挙げられるのは、映像配信には機材や人が必要なのに対し、プロスポーツと違って地方大会やアマチュアスポーツ大会の運営には映像配信に費やすコストと人的リソースに余裕がないことです。

中村 正敏:NTTSportict 代表取締役社長 NTT西日本 ビジネスデザイン部 スマートデザイン部門長 一般社団法人「コトの共創ラボ」代表理事 福岡eSports協会 理事 アライアンス、新規事業・サービス開発のインキュベーションが専門。NTTでは全国代理店網を構築しNTT外部販売チャネルの礎を築いた後、再編後のNTT西日本でフレッツテレビ、ひかりTV、スマートTV事業などの立上げに携わる。2014年よりオープンイノベーションやe-Sportsなどに取組み、2020年4月に「NTTSportict」を設立。
中村 正敏:NTTSportict 代表取締役社長 NTT西日本 ビジネスデザイン部 スマートデザイン部門長 一般社団法人「コトの共創ラボ」代表理事 福岡eSports協会 理事 アライアンス、新規事業・サービス開発のインキュベーションが専門。NTTでは全国代理店網を構築しNTT外部販売チャネルの礎を築いた後、再編後のNTT西日本でフレッツテレビ、ひかりTV、スマートTV事業などの立上げに携わる。2014年よりオープンイノベーションやe-Sportsなどに取組み、2020年4月に「NTTSportict」を設立。

中村:海外の学生スポーツには、すでにAIカメラはかなりの台数が設置されていて、たとえばアメリカには専用アプリで学校名とスポーツを選択すると試合を視聴できるサブスクリプションサービスがあるし、ヨーロッパでは大手スポンサーによってアマチュアスポーツを無料で視聴できる仕組みがあります。 しかし日本の場合は、プロスポーツ以外は家族やチームメイトが自分たちでファインダーを覗きながら選手を追いかけて撮影するしかない。 そこで、イスラエルのベンチャー企業が開発した、ボールを追尾することに長けたAIカメラ「Pixellot」を活用して、マイナースポーツやアマチュアスポーツを無人で撮影して発信できる世界を広めたいと考えました。設立から数ヶ月ですが、すでにいろんな団体や学校で、イスラエルのベンチャー企業が開発した、ボールを追尾することに長けたAIカメラ「Pixellot」を活用して、マイナースポーツやアマチュアスポーツを無人で撮影して発信できる世界を広めたいと考えました。設立から数ヶ月ですが、すでにいろんな団体や学校、業界からお問い合わせをいただいています。

PixellotS2:競技施設に設置しAIが自動でカメラワークを行うことで、撮影コストを約10分の1に抑えることが可能。ハンドボールやサッカーなど12種類の競技に応しており、コーチング機能をもつ機種もある。
PixellotS2:競技施設に設置しAIが自動でカメラワークを行うことで、撮影コストを約10分の1に抑えることが可能。ハンドボールやサッカーなど12種類の競技に対応しており、コーチング機能をもつ機種もある。

――アメリカやヨーロッパではAIカメラが浸透していたのに、なぜ日本には入ってこなかったのでしょうか。

土井:それは、海外に比べると日本のスポーツビジネスは未熟だからです。海外ではハンドボールで稼ぐ仕組みがあるけれど、日本にはその仕組みがない。アマチュアスポーツがお金を稼ぐのが難しい状態にあることが、スポーツビジネスが成長しない理由だと思っています

中村:まさに、アメリカのスポーツ業界は、100万人が見る試合だけでなく、100人が見る試合も発信するんですよね。視聴者数は少なくてもエンゲージメントの高い人がいつでもどこでも試合を視聴できる環境を整えています。 だから、NTTSportictではマイナースポーツやアマチュアスポーツの試合を誰でも視聴できる環境を整えようとしているところです。

AIカメラは、一人でも多くの人がマイナースポーツに興味を持つきっかけに

――マイナースポーツでも、いつでもどこでも視聴できるようになれば、そのスポーツの未来の選手を生むことにもつながりそうです。

中村:そうですね。たとえば、NTT西日本のソフトテニス部には世界トップクラスの選手がいるのですが、日本でソフトテニスはアマチュアスポーツだから知られていません。でも、試合を全国に発信できれば、スポーツや選手の応援につながりますし、興味を持つ子どもたちも増えると思います。

土井:今までは目にする機会がなかったスポーツでも、試合の映像がきっかけで少しでも多くの人の目に触れるようになれるならチャンスですね。

土井 レミイ 杏利:日本ハンドボールリーグ『大崎電気』所属 フランス人の父と日本人の母の間に生まれ、小学3年生の時にハンドボールを始める。浦和学院高校へ進学、日本体育大学へ進む。その後、フランスへ渡り、2012年に1部リーグに属するシャンベリ・サヴォワ・ハンドボールにてプロ契約を結ぶ。2017年2月にパリで開催された「ハンドスターゲーム2017」の外国人国籍選抜チームとして、日本人ハンドボール選手史上初の出場を果たす。その後、2019年シーズンまでの7年間フランスで活躍。現在は、日本ハンドボールリーグ『大崎電気』に所属、日本代表キャプテンとして活躍している
土井 レミイ 杏利:日本ハンドボールリーグ『大崎電気』所属 フランス人の父と日本人の母の間に生まれ、小学3年生の時にハンドボールを始める。浦和学院高校へ進学、日本体育大学へ進む。その後、フランスへ渡り、2012年に1部リーグに属するシャンベリ・サヴォワ・ハンドボールにてプロ契約を結ぶ。2017年2月にパリで開催された「ハンドスターゲーム2017」の外国人国籍選抜チームとして、日本人ハンドボール選手史上初の出場を果たす。その後、2019年シーズンまでの7年間フランスで活躍。現在は、日本ハンドボールリーグ『大崎電気』に所属、日本代表キャプテンとして活躍している(写真提供:日本ハンドボールリーグ機構)

土井:マイナースポーツが注目を浴びるために必要なのは、結果を残すことと、一人でもスター選手を生むこと。それから、広島カープが「カープ女子」を作り上げたように、戦略的に新しい取り組みをして話題を作ること。だから、AIカメラが話題性を作れるような仕組みならすごく面白いと思います。

中村:スポーツのルールとボールの動きを学習したAIカメラは、全体を俯瞰した映像だけでなく、特定の選手だけを追う映像やゴールシーンにフォーカスした映像などを自動で撮影・編集できます。 だから、テレビ視聴と変わらない体験ができるし、映像の画質もテレビと同等レベルです。今後できることは増えていくでしょうし、話題性を作れるような仕掛けもできると思っています。

ハンドボールに必要なのは、普段味わえない空間づくりとエンタメ性

――土井選手は、日本のスポーツ業界やハンドボールに対してどのような課題を感じていますか?

土井:ハンドボールはすごく魅力的なスポーツなので、試合を一度見てもらえたら好きになってもらう自信はあります。でも問題は、ハンドボール自体が知られていないのと、知っていてもお金を払ってまで試合を見に行きたいとは、なかなか思ってもらえないこと。

土井選手2
(写真提供:日本ハンドボールリーグ機構)

土井:この課題を解決するには、普段味わえないような特別な空間を演出する必要があります。もちろん、費用がかかるため簡単ではありませんが、場所は市民体育館ではなくスタジアムにして、入場シーンやハーフタイムにエンタメ性を持たせると、試合を見たことがない人も興味を持つきっかけになるはず。 しかも、日本のハンドボールは実業団で地域に根ざしたものではないため、“ホーム&アウェイ”がないんですね。たとえばサッカーや野球はチームごとにホームがあるから、ホームの地域に住む人を巻き込みやすい。でも、ハンドボールはクラブがある地域の人すら巻き込めていません。 その人たちを巻き込むためには、たとえば入場シーンで光や音、最先端のテクノロジーを駆使した演出をし、ハーフタイムでアーティストにパフォーマンスしてもらうなどのエンタメ性を取り入れて、話題を作るのが必要だと思っています。 ただ、それを選手だけでプロデュースするのは限界があります。自治体も巻き込んでマイナースポーツを面白いコンテンツに変えていくプロデューサーに仲間になってもらいたいとずっと思っていました。

中村:ハンドボールに触れたことのない人を巻き込むには、「面白い!」と思える仕掛けが必要です。だから私も、AIカメラなどデジタルの領域で、一人でも多くの人が見るきっかけを作りたいと考えています。その結果、リアルな試合を見に行く人が増えたり、プレイヤーが増えたりしたら嬉しいですね。

「走る・投げる・飛ぶ」ハンドボールは、他の球技と親和性が高い

――ハンドボールのどんなところに魅力を感じますか?

塚本:ハンドボールは「走る・投げる・飛ぶ」の3要素があって、いろんな競技の特徴を持っています。だから、バレーやバスケ、サッカーなどとの親和性が高く、ハンドボール選手は他の球技もだいたいできるんです。

塚本清修:慶應大学 慶應体育会ハンドボール部主将
塚本清修:慶應大学 慶應体育会ハンドボール部主将

塚本:また、選手同士が近い距離でコンタクトをするし、ラグビーのように体当たりしながらゴールを目指す、プレイする側と観戦する側の双方にとって面白い競技だと思っています。

土井:まさにその通りで、もう一つ付け加えるなら「シュートのバリエーション」がとても多いこと。いろんな角度からのシュートがあって毎回同じ形で得点が入ることがありません。「空中の格闘技」と言われるくらい空中での駆け引きもあって、それは魅力ですね。

――塚本さんはハンドボールに対して感じている課題はありますか?

塚本:僕は小学校からハンドボールを続けているのですが、土井選手と同じですごく魅力的なスポーツだと思っています。課題に感じているのは、一度ハンドボールを見に来た人をリピーターにするのが難しいことです。

塚本選手2

塚本:たとえば、イベントを企画して大々的に告知をした昨年11月の早慶戦は、企業や飲食店にスポンサーになってもらってエナジードリンクなどの商品を来場者に配り、ハーフタイムでは慶応と早稲田のチアリーディング部がショーをするなどのエンタメ性を持たせたので、1000人以上の来場者がありました。 観客との一体感が生まれて、早慶戦は大成功だったのですが、リピーターにはつながらなかった。毎回早慶戦のようなイベントなら来てくれるかもしれませんが、通常の関東リーグなどは特別なことをしない普通の試合だから、友人たちも来てくれません。 学生時代にハンドボール部だった社会人はたくさんいると思うので、まずはそういう人たちが「もう一度見に行きたい」と思えるコンテンツの見せ方を考えるのが必要だと感じています。

土井:そこまでできるのは実業団よりもすごいです。僕は学生時代にハンドボールのことしか考えていなかったから、集客のことなんて考えたことがなかったですよ。

コート外でのチームビルディングが本当に強いチームを作る

塚本:土井選手にぜひ教えていただきたいのですが、勝つ強いチームを作るためには何が必要とお考えですか?

土井:フランスのチームで実際に体験したことですが、本当に強いチームは、心まで一つになっています。心が一つだと、他のチームに比べて技術や能力が劣っていたとしても、強いチームに勝てる。そのために必要なのは、毎日集まって練習することだけでなく、コート外での時間をできるだけ多く共に過ごすことです。 実際、フランスのクラブチームは、メンバーが入れ替わると練習より先にチームビルディングをするんですね。たとえば、チームで激流の川を下ったり、山の中でミッションをクリアしながら全員でゴールを目指したり。 スポーツはどうしても体力や技術面を鍛えがちだけど、仲間との心のつながりの強さを意識したら強くなると思いますよ。ぜひ、そういうチーム作りを実践して欲しいです。しかも、そうした強いチームの作り方は、今後社会人になってからも生きると思います。 会社やチームを第一に思って仕事ができれば、自ずとポジションが上がっていくだろうし、どんなにピンチな状況になってもチームで乗り越えられるはずです。

中村:土井選手の話を聞いて感動しました。NTTSportictは多様性にあふれた組織だし、それらを認めた上でワンチームとして仕事をしているから、すごく共感します。企業でも、最初から「君の仕事はこれ」と仕事を渡すのではなく、その前に一緒に何かを乗り越える経験を積むのは大事ですね。

ハンドボールを夢のある球技として進化させたい

――これから、どんなスポーツの未来を作りたいですか?

塚本:ハンドボールはとにかく楽しいスポーツだし、いろんな競技の要素が入っていることを知らないのは勿体ないと感じています。ハンドボールの未来に貢献するためにも、まずは大学を卒業したらOBとして慶応のチームに貢献したいです。

土井選手3
(写真提供:日本ハンドボールリーグ機構)

土井:僕は、ハンドボールが広く認知されて選手が競技に集中できる時代が来たらいいなと思っています。ハンドボールに興味を持った子どもたちが夢を持てるような未来を作りたいし、それを作るのが僕たちの仕事だと思っています。

中村:まずは、今まで見られなかった映像が、いつでもどこでも見られるようにしたいです。また、デジタルデバイスでの視聴ならではのエンタメ性や視聴者参加型のゲーミフィケーションを持たせる仕掛けづくりにも挑戦したいです。 そしていずれは、マイナースポーツがもっと身近な存在として感じられる世界を作りたいと考えています。加えて、スポーツ選手という職業がもっと身近になるよう、多くの人との接点を増やすことにも取り組みたいですね。

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NTTSportictではスポーツのルールやボールの動きを学習し、自動で撮影から編集までを行うAIカメラを用い、低コストかつ容易に撮影・映像配信ができるソリューションを提供しています。

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